百合心中を読んだ
作者は東雲水生。
サブタイトルは「猫目堂ココロ譚」。
猫目堂という不思議なお店を中心に、一話完結の物語が綴られていくオムニバス作品。
非現実的な要素が若干出てくるものの、主題はあくまで女の子同士の恋愛、すなわち百合である。
百合というジャンルにおいては、女の子同士が惹かれ合って紆余曲折の末に結ばれる作品が多い。
ラブコメの割合も比較的多く、大抵はハッピーエンドを迎えることにもなる。
それはニーズに答えた結果だと思うし、実際私も百合のラブコメは大好きだ。
でも、ときには切ない展開を見せたり、幸せとは言えない幕引きを迎える作品を読んでみたくもなる。
そして本著ならば、そういう欲求に答えてくれるのだ。
ストーリーはかなり現実的。
本著の世界観においては、女性が女性を想うことは途轍もなくリスキーな行為であり、易々と口にできるようなことではない。
だからキャラクターたちは深く思い悩み、その末に道を踏み外し、心を失ってしまう。
そこで出てくるのが、サブタイトルにもある「猫目堂」というわけである。
そこの少女店主によって道を示され、なくした心を取り戻し、彼女たちは日常へと帰っていく。
ただ、その先にあるのが幸福に満ちた未来であるとは、必ずしも限らない。
そんな本だ。
一言で言ってかなり好みだった。
なかでも一話と二話が特にいい。
人が人を好きになる以上、そこには綺麗事では決して片付けられないような感情や問題が、どうしても生じてくる。
エゴとエゴを間近でぶつけ合うことになるのだから、意見を異にすることなど日常茶飯事だろうし、喧嘩だって当然起こる。
ましてやそれが同性ともなれば、ヘテロのカップルよりも気にしなければならない事柄は多くなるのだ。
まず法的、社会的に認めてはもらえないし、世間一般の常識も分厚い壁として立ちはだかってくる。
周囲の目もある。家族の問題もある。
簡単にいくわけがないのだ。
第三者の心ない言葉に傷つけられることもあるだろう。
無理矢理押し倒されるようなこともあるかもしれない。
気持ちを受け入れてもらえずに身を切るような苦しみを味わうことだってあるだろう。
しかしそれでも、生まれてしまった感情を消すことなどできはしない。
月並みな言い方をすれば、好きになってしまったものはしょうがないのだ。
だからキャラクターたちは悩み苦しみ、そして道を踏み外す。
そんな過程が本作においてはしっかりと描かれていて、そこがいいのである。
細部には甘い点も散見されるし、全体としての完成度はそこまで高くない。
そもそも猫目堂の設定はいらないのではと個人的には思うくらいだ。作品の土台と言える設定なのにもかかわらずである。
つまり、手放しにお勧めできる作品とは言いがたいのだ。
それでも私は、本著に魅力があると思っている。
現実的で、ままならなくて、不条理で。
そういった話ばかりが集められているこの本のキャラたちはしかし、最後に必ず心の落とし所を見つけ出す。誰ならぬ、自分たちの手によって。
この本の、そこが魅力的だと思うのだ。
サブタイトルは「猫目堂ココロ譚」。
猫目堂という不思議なお店を中心に、一話完結の物語が綴られていくオムニバス作品。
非現実的な要素が若干出てくるものの、主題はあくまで女の子同士の恋愛、すなわち百合である。
百合というジャンルにおいては、女の子同士が惹かれ合って紆余曲折の末に結ばれる作品が多い。
ラブコメの割合も比較的多く、大抵はハッピーエンドを迎えることにもなる。
それはニーズに答えた結果だと思うし、実際私も百合のラブコメは大好きだ。
でも、ときには切ない展開を見せたり、幸せとは言えない幕引きを迎える作品を読んでみたくもなる。
そして本著ならば、そういう欲求に答えてくれるのだ。
ストーリーはかなり現実的。
本著の世界観においては、女性が女性を想うことは途轍もなくリスキーな行為であり、易々と口にできるようなことではない。
だからキャラクターたちは深く思い悩み、その末に道を踏み外し、心を失ってしまう。
そこで出てくるのが、サブタイトルにもある「猫目堂」というわけである。
そこの少女店主によって道を示され、なくした心を取り戻し、彼女たちは日常へと帰っていく。
ただ、その先にあるのが幸福に満ちた未来であるとは、必ずしも限らない。
そんな本だ。
一言で言ってかなり好みだった。
なかでも一話と二話が特にいい。
人が人を好きになる以上、そこには綺麗事では決して片付けられないような感情や問題が、どうしても生じてくる。
エゴとエゴを間近でぶつけ合うことになるのだから、意見を異にすることなど日常茶飯事だろうし、喧嘩だって当然起こる。
ましてやそれが同性ともなれば、ヘテロのカップルよりも気にしなければならない事柄は多くなるのだ。
まず法的、社会的に認めてはもらえないし、世間一般の常識も分厚い壁として立ちはだかってくる。
周囲の目もある。家族の問題もある。
簡単にいくわけがないのだ。
第三者の心ない言葉に傷つけられることもあるだろう。
無理矢理押し倒されるようなこともあるかもしれない。
気持ちを受け入れてもらえずに身を切るような苦しみを味わうことだってあるだろう。
しかしそれでも、生まれてしまった感情を消すことなどできはしない。
月並みな言い方をすれば、好きになってしまったものはしょうがないのだ。
だからキャラクターたちは悩み苦しみ、そして道を踏み外す。
そんな過程が本作においてはしっかりと描かれていて、そこがいいのである。
細部には甘い点も散見されるし、全体としての完成度はそこまで高くない。
そもそも猫目堂の設定はいらないのではと個人的には思うくらいだ。作品の土台と言える設定なのにもかかわらずである。
つまり、手放しにお勧めできる作品とは言いがたいのだ。
それでも私は、本著に魅力があると思っている。
現実的で、ままならなくて、不条理で。
そういった話ばかりが集められているこの本のキャラたちはしかし、最後に必ず心の落とし所を見つけ出す。誰ならぬ、自分たちの手によって。
この本の、そこが魅力的だと思うのだ。
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