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オクターヴ4を読んだ

作者は秋山はる。
ファンタジックでもサイエンスティックでもないごく平凡な世界で、どこにでもいるような女同士の、どこにでもあるような恋愛を描くシリーズの第四巻。

三巻は綱渡りのようなあやうい展開に恐怖を感じたけど、この四巻は主人公の無防備さが恐い。
アイドルをやっていた過去があって、顔は人並み以上にかわいいのだが、そのことを当の本人がまるで自覚してないので、まわりから見たら隙だらけなのだ。
そのことに「つけこまれてる」とは主人公の恋人の弁であるが、もっともな意見だと思う。

仮にも主人公の恋人である彼女からすれば、主人公の無防備さは読者にとって以上に恐怖の対象だ。
男性というものがどのような性質を有しているか、世間並みの人生を送っていれば、二十歳を過ぎる頃にはおおよそ知れる。なにせほぼすべての男が本能から女を抱きたがるのだから、知るための機会には事欠かない。美人であればなおのことだ。
だから彼女にとっては、主人公の無防備さがあまりに度しがたいものとなる。それが恐くてたまらなくなってしまう。思わず辛辣な物言いをしてしまうほどに。

でも、その痛烈なことばの数々も、痛い以上に心地いい。
別に私がマゾだとかいう話ではなく、遠慮のない批判の裏には、覆い隠せないほど強い愛情があるとわかるからだ。

主人公を「引き込んだ」のは彼女である。それゆえに責任を感じて、主人公へ好意を寄せつつも、深く踏み込みすぎないようにしてきた。これまでは。
それが三巻で崩れ始めて、この四巻で崩壊が決定的なものになった。

主人公の身体をかきいだいて告げた一言は、彼女にとって初めての「告白」だ。壁を壊し、戻れない一歩を自分の意思で踏みだし発した魂の叫びだ。
ふたりがたどった道程はゆるやかなものでは決してなく、波乱に満ちた険しいものだった。
だからこそあの告白が、重く強く価値を持つ。

三巻で、こりゃねえわって笑うくらいにすさまじい、最上級の百合を見せてくれた本作だけど、四巻ではさすがに落ちるだろうと思っていたその予想を、またしても裏切られた。
いやあ落ちないわ、ほんと。

同性愛を現実に当てはめて考えると、今の日本では過酷と言うしかない状況だ。
ひとには打ち明けられないし、理解は基本的にされないし、結婚の制度がないから社会的な信用も保証もろくに得られない。
多くの百合作品は、そこを避ける。殊更に取り上げることはあえてしない。だから百合作品は、見る者の目にはファンタジックな世界の出来事と映る。
それが悪いと言いたいわけではない。ヘテロなカップルを扱った作品であっても、現実的な要素を廃して核心と決めた要素のみを抽象的に描き出すことで、他作に劣らないおもしろさを発揮しえたケースは少なくない。
百合好きが求めるものは「倒錯した関係」であり「女の子同士のあまい世界」であって、つらく苦しい現実にさいなまれるふたりの姿では決してないのだ。
だから百合から現実を排除し幻想に徹させることは悪ではないし、それを望む土壌があるからこそ供給の生じる余地がある。

けれど、それでも見てみたくなるのだ。
狭量な世界と折り合いつけながら、どうにかやっていこうとがんばっているふたりの姿を。
そんな欲求を満たしてくれるのが、この作品なのです。


オクターヴ 4 (アフタヌーンKC)
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テーマ : 百合
ジャンル : アニメ・コミック

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