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ゴミ箱から失礼いたしますを読んだ

著者は岩波零。
イラストは異識。
第五回MF文庫新人賞、優秀賞受賞作。

ゴミ箱に強く惹きつけられ、その中に入って妖怪ゴミ箱男となった主人公が、普通の人間へ戻るためにアレしたりコレしたりする物語である。

もうこのあらすじだけで、ある意味勝ってるような気がする。何に対して勝ってるのかはわからないけど。強いて言うなら読者の常識にだろうか。
ともかく、冒頭こそがすべてと言っていい作品だと思う。そこで読んでみたいと思ってしまったら負けであり、そして私は敗者だった。

全体としてはレベルの高い作品では決してなく、インパクトのある設定を考慮に入れても、凡作ちょい上くらいの内容だと思う。つまり、手放しに面白いと評価できる作品ではない。
キャラはテンプレ的だしそのわりに言動が一貫してないし、ストーリーも過度に御都合主義的だ。人によっては、途中で退屈だとすら思ってしまうかもしれない。
そして、そういった弱点を挽回できるほどの大きなプラス要素が、主人公が妖怪ゴミ箱男であるというぶっ飛んだ設定以外にない。

しかしそれは、逆を言えば発想だけで他のすべてのマイナスをねじ伏せているということでもある。冒頭こそがすべてというのは、そのあたりを指しての言葉だ。
だってゴミ箱に惹きつけられて入ってみたくなって、実際に入ったら妖怪ゴミ箱男の誕生ですよ。なにそれ次にどうなるのって思っちゃうでしょう。
でもって、そう思わせた時点で「勝ち」であるわけだ。

小説というのは総合力、すなわち文章力や語彙力、比喩、ギャグセンスなど、文章にまつわる能力のすべてを総合的に使って面白さを構築していく創作媒体だと思っていた。その認識は、どうやら誤りであったらしい。
一極集中でも、本当に飛び抜けていたなら、そこを柱として作品は成り立つようだ。本作の場合は、それが発想力だったというわけである。


ゴミ箱から失礼いたします (MF文庫J)
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テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

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