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「イリヤの空 UFOの夏 その4」

泣いても笑ってもシリーズ最終巻、著者は秋山瑞人氏です。



泣いたか笑ったかで申しますれば、私は泣きました。
正確には、泣く羽目に陥りました。
物語に感動したから、という訳ではありません。
クライマックスの展開に対して壮絶な思い違いをしていた事に、読了して初めて気付くに至ったからです。極めて個人的な事情ではあるのですが、それだけに精神的なダメージは想像を絶するものがありました。

その思い違いについては、ここであえて語る事はいたしません。したところでさしたる意味もないでしょう。むしろ、思い違いをしていた事そのものより、本来享受できていたであろう楽しみの悉くを自らの拳で粉砕してしまったという事実に、涙をこぼさずにはいられません。後悔が先に立つ事は決して無いのだという先人の教えが胸に突き刺さります。

上記のような理由から、私が本著をあるべき視点から見て正しく評価する事が極めて難しい状況にある事は、ご推察いただける事と思います。正直に申しますれば、エピローグを読み終えあとがきをも読了し、胸に去来した最初の言葉は「え? これで終わり?」というような意味を持つものでした。
呆然とするばかりの脳内は、まもなく驚きへと占める感情を推移させ、それは後悔へと移り変わって絶望に至る事になります。いわゆる「やっちゃった」という状態です。頭を抱えて転げ回りたい衝動を抑えるのに大変でした。

とは申せ、過ぎた事をいつまでも悔やんだところで仕方がないというのも事実です。こういう不手際はさっさと忘れるに限ります。時が経てば、また違った心境で読む事のできる機会も訪れるでしょう。

そのような訳で、クライマックスの展開に関しましては凄まじいまでの消化不良感を覚えたとしか申し上げようがないのですが、比較的客観性を持って評価できていた中盤あたりまでの雑感だけでも書いておこうと思います。



ネガティブな事を先に書いておきます。
兎にも角にも、描写の不足が目立つのです。
ですがそれは、本作品のメインエピソード、すなわち浅羽と伊里野の2人にまつわる物語が、徹底して浅羽の視点で描かれている事に起因します。つまり、浅羽の知り得る情報に関してのみ読者に対しても明かされ、それ以外の事柄は浅羽も知らない代わりに読者も知らないままという事なのです。
手法としては間違っていないと申しますよりむしろ面白いとさえ思いますが、しかし消化不良感は否めません。完全に明かせとまでは申しませんが、あと少しだけでも言及して欲しかったと思わされる事柄が幾つも残っているのは残念なところです。

話は変わって本作品、シリーズ全4巻を総合して一言で評する際、もっとも適切な言葉は、「少年少女達の等身大の物語」であると私は思います。
主人公達は義務教育下にあり、親の庇護の元に生きていくという以外のすべを知らず、その在り方は何処をどう見ても子供のそれですが、子供は子供なりに考え、行動し、生きていきます。

一方の大人は、子供から見れば無限にも思える選択肢を有しながらも、実際にはその中で選び取れるものはごく僅かに過ぎず、1人に可能な事などたかが知れています。そしてそれは、子供も同じです。
何を考えようと、どのように行動しようと、彼らにできる事は、ごく小さく僅かな事だけです。

彼らの1人1人が如何に足掻こうとも、大局に与える影響はごく小さなものでしかありません。結局は巨大な流れに飲まれ掻き消されてしまう程度のものでしかなく、そして彼らは無力感に打ちひしがれる事になるのです。

しかし、そんな彼らでも、最後に残ったほんの少しの想いを貫き通す事ができたなら、或いは世界さえも変えてしまうかもしれません。
世界を救うためなどではなく、たった1人、自らが想う相手のためだけに戦おうと旅立ち、その帰路さえ塞いで少年を守り抜いて、ついには世界を救ってしまった少女のように。

伊里野の外見からは、アルビノを思わせる特徴が幾つか見られます。彼女は果たして、先天的にそうだったのか、それとも後天的にそうなったのか、どちらなのでしょう。
本作品を読まれた方には説明するまでもないでしょうが、伊里野は後天的にそうなるに足る可能性を多分に孕んだ環境に身を置いていました。彼女が日本人であったのかさえも作中では明言されませんから、外見的な特徴が生まれついてのものである可能性も否定できません。ですが彼女が過ごしてきたであろう過酷な環境を思えば、後者であるとの推測は容易に成り立ちます。

遺伝子レベルでの特徴を、身体の内側から捻じ曲げるほどの様々な「何か」を、彼女は物心のつく頃には既に日常としていたのです。それがどれほどの苦痛の積み重ねであったのかは、想像だにできません。
そのような、想像を絶する苦痛の人生すらも肯定し、一時でも長く浅羽と共にある事を望んだ彼女の顛末が、幸せに満ちたものであるようにと、私は願わずにはいられないのです。
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