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「円環少女(2) 煉獄の虚神(上)」

著者は長谷敏司さん、イラストは深遊さんです。
シリーズ第2巻となります。

円環少女(2) 煉獄の虚神(上)

上下巻の上巻であります故に、本著の“燃え”は、第1巻のそれと比べますと、若干抑えられ気味です。とは申しましても、まったく無いという訳では勿論なく、「魔法」という神に愛された者だけが行使可能な究極の奇蹟の、その極致がぶつかり合うさまを垣間見る事ができます。

恐らくはすべての魔法世界に存在するであろう「化身」という現象と、それを利用し魔法と成した円環大系の魔術の1つ、「破滅の化身」。第1巻でメイゼルが使用した奥の手です。

その実体は、魔法使い自身が「ここにいる」という、それ自体閉じた円環になっている現象を位相幾何学的に無理矢理変形させ、小さな円環を理論上無数に作り出すというものです。
早い話が分身の術ですが、1つ違うのは、生み出された化身は影でも幻でもなく、術者自身と完全に同一の存在だという事です。そのため、2人に分かれた術者の攻撃能力は、単純に倍化する事になるのです。

円環大系の高位魔導師であれば、ほぼ全員が使えるであろうその魔術を、最高位の術者が行使した場合、如何ほどの奇蹟を呼び起こすのか。
そして、それに真正面から相対できる魔導師の力量とは、一体どれほどのものなのか。
その答えは、本著の中盤に綴られています。

メイゼルが、100の屍を踏み越えた先に立つ事がもしできたなら、彼女もまたその域に達する事ができるのかもしれません。
彼女が強いのは、年齢に比して卓越した魔法能力を持つからではなく、その意志が強固だからです。生き延びる可能性がゼロだとしても、死のその瞬間まで魔導師たらんとする意志の輝きこそが、彼女の強さの源なのです。

今の彼女が弱者たる理由があるとするなら、それは幼さゆえの甘さと、致命的な経験不足だと思います。たとえ実力で凌駕していようとも、経験に劣れば裏をかかれ、非情に至れなければ隙を突かれてしまいます。
彼女が経験の不足を補い、己が甘さを完全に殺す事ができたなら、その実力を戦いにおいて発揮する事に対し、障害となるものは何一つなくなります。そして、そこに持ち前の意志の強さが加わったなら、いつかは最高位の魔導師にさえ届く事もあるかもしれません、

とは言いつつも、彼女には高位魔導師としての大きな可能性と共に、まったく別の方向での将来性があります。
第1巻のレビューでは触れませんでしたが、この第2巻に至ってなお触れないという訳にはいかないでしょう。端的に申しますと、彼女はいわゆる嗜虐趣味の持ち主、つまりは筋金入りのサディストなのです。

サディストと申しますと、「タザリア王国物語」のリネア様が想起されますが、彼女と比べれば、メイゼルはまだ大人しい方ではあります。ですが、リネア様のそれが鬱屈した感情の捌け口として嗜虐行為に至っていたのに対し、メイゼルのそれは「背の高い人を屈服させる事や、可愛い子の泣き顔を見るのが大スキ!」という、如何にも直接的な動機によって行われています。しかも、そこに恐らく性愛も絡んでいる事が、彼女のキャラクターを一層ややこしいものにしているのです。
更に申しますと、彼女は小学校6年生にして、既にその域に達しています。魔導師としてだけでなく、色々な意味で将来有望なのです。



閑話休題。
この上巻では、顔だけ見せて実際には何の活躍もないキャラクターも登場しています。明らかに重要な位置を占めると思われるキャラクターだけに、恐らくは下巻で大きな活躍を見せるものと思われます。
また、張られたまま回収されていない伏線も、当然のようにあります。それらがどのように収束していくのかも、下巻の見所と申せましょう。

総括としましては、やはり「面白い」の一言に尽きます。
「読みづらい」という評価が多く聞かれるにもかかわらず、私がそれを殆ど意識しなかったのも、世界観に強く引き込まれるが故の事でしょう。100点満点で評しますれば、95点といったところです。
5点の減点は、前巻に比べて燃えが足りなかった事が理由ですが、前巻がむしろ燃え過ぎでしたし、本著が上下巻の上巻だという事もありますから、そういった要素を考えなければ、100点をつけてもいいかもしれません。ともあれ、続きが非常に楽しみです。
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テーマ : ライトノベル書評
ジャンル : 本・雑誌

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