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「タザリア王国物語 影の皇子」

著者はスズキヒサシ氏、イラストはあづみ冬留さんです。



とある国のスラム街に生まれ育った1人の少年が、その国の皇子と瓜二つだった事から始まる物語です。皇子の影武者として、皇家の一員として育てられる事になった彼は、ある大きな事件をきっかけとして、歴史の表舞台に立つ事となります。
本著には、皇子にそっくりな主人公、ジグリットが皇家に家族として迎え入れられてから、「ある大きな事件」の起こった直後までが綴られています。シリーズの第1巻という位置付けで、今後に続く事が予定されているのです。

面白いか面白くないかで申しますと、面白いと答える事にはなるのですが、それはストーリーが特筆に値するほど面白いという事ではありません。と申しますより、この第1巻は伏線を張る事に重きを置いているように見受けられ、終盤へ至るまでは文章の殆どが日常の描写に終始しています。面白いかどうかは、その日常の描写を是とするか非とするかによる訳ですが、そこは“戦記ファンタジー”というジャンルを好む方なら、それなりに楽しめるのではないかと思います。

ですが、本著の真に注目すべき部分は、そのようなところではないのです。本著の、その語るべき最大の魅力は、「リネア様」の1点に尽きると申しましても過言ではありません。
「リネア様」とは、主人公ジグリットに生き写しの皇子、ジューヌの実姉、すなわち皇女です。本著においては、一応ヒロインのような扱いをされています。

「一応」とか「ヒロインのような」だとか余計な言葉が付け足されているのは、彼女の在り方が、ヒロインと聞いて一般的に思い浮かべるだろうそれとは大きくかけ離れているからです。
彼女は、端的に申しますと我侭で意地悪なのですが、その度合いがいささかいき過ぎている感があります。彼女は、自身の抱える退屈やイライラを紛らわせるために、実弟のジューヌも含めた周りの人間に、言葉でけなしたり、無理難題を押し付けたり、果ては暴力までふるいます。そしてその矛先は、弟の影武者であるジグリットにも、当然のように向けられるのですが、実は彼に対してのみ、行為の裏に隠された、彼女自身も気付いていない感情があるのです。

有体に申しますと、彼女は超ド級のサディストなのです。
しかも、心の奥底では、割と出会ったばかりの頃からジグリットにラブラブなのですが、それに自分で気付いていないばかりか、彼をストレス解消用の精神的サンドバッグとして扱い、そして実際に、彼を虐める事で彼女のイライラは軽減されているようなのです。快感を得ていると申しましても嘘にはならないでしょう。まさしく、生まれついてのサドなのです。

彼女は、ジグリットを自らの支配下へ置く事に、並々ならぬ執念を燃やしています。それは表に出てくる事は決してありませんが、ひとたび自分とジグリットの間に割って入ろうとするものが現れたなら、一切の容赦なく叩き潰そうとします。しかも、自らが手を下す事はありません。人を使い、巧妙に偽装し、彼を手のひらの上で踊らせるのです。
この素晴らしいまでのサドっぷり邪悪っぷりは、特殊な嗜好を持つ一部の方々の心を掴んで決して放さないでしょう。100年ののちにも残したいほどの逸材です。

さて、そんなリネア様とジグリットの関係も、前述の「ある大きな事件」によって大きく動くと思われます。本著においてはその直前までしか綴られてはおらず、つまり一番いいところで一旦の終わりを迎えてしまっているのです。続巻が待ち遠しい事この上ありません。

特定の部位の素晴らしさのみをここまで書いてまいりましたが、本著にも欠点らしきものは一応ながら存在しています。本著は、400ページ近くもある比較的厚めの本なのですが、その文章量の割に内容が薄いと感じられました。幾つかのエピソードを削るなどして、もう少しコンパクトにまとめられたようにも思えますので、ここは残念なポイントと申せましょう。

ですが、正直に申しますと、そのように曖昧な欠点らしきモノなどはどうでもいいのです。
本著を語る際には、言葉は一行分ありさえすれば充分です。すなわち、

「1にリネア様、2にリネア様、3、4がなくて5にリネア様」

という事なのです。
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テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

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