著者は松野秋鳴氏、イラストはQP:flapperのお2人、さくら小春さんと小原トメ太さんです。

主人公の砂戸太郎は、究極のM男です。
女性から加えられる、ありとあらゆる暴力によって、苦痛を感じるどころか逆に気持ち良くなっちゃうという、筋金入りのド変態です。
罵倒、罵声、侮蔑、嫌悪の眼差し、殴る蹴るなどの直接的な暴力などなど、普通ならば忌避してしかるべきそれらを、理性を凌駕する本能によって、歓喜と共に受け入れてしまう男。それが、本著の主人公なのです。
中学生の頃に、とある事情からその性癖に気付いてしまって以降、主人公はそれを心の底から忌み嫌いながらも抗うことができず、女性に対して恐怖に近い感情さえ抱きながら、日々を過ごしていました。
主人公にとっては、不注意からみぞおちに肘を入れられたとか、そういう苦痛でさえ快感になります。そして自分を見失い、「もっと殴って下さい女王様!」などと哀願することになってしまうのです。相手の女性はおろか、周りの人達もドン引き間違いなしです。
女性との接触時には、その恥ずかしい性癖を露呈してしまう危険性が常に付きまとうことになるわけで、自分の性癖を嫌悪している彼にとって、そのような状況が心休まるものであろうはずもありません。
そんな主人公ですが、ある日恋をします。相手は、バイト中に見掛ける名も知らぬ他校生です。
年若い彼は、考えます。「もし彼女と付き合うことになったとして、もし喧嘩になったとして。罵詈雑言を浴びせられて、平手で打たれて、その瞬間豹変して、もっともっとと乞うようなことに、もしなってしまったら」と。自らの性癖をひた隠しにしている彼にとって、その想像はとてつもなく恐ろしいものでした。
そして、彼は悩みます。自らの性癖を何とか治したい、しかしどうすればいいのかと。
そこで親友の助言を得、「生徒達の願いを叶えてくれる」と噂の第二ボランティア部を訪ねることにするのです。
そんなお話です。
設定先行の出オチ的な物語かと思いきや、実はしっかりと作り込まれた作品でした。
内容を簡潔に申しますれば、『ハーレム展開のラブコメ』であり、目新しさはそれほどありません。ですが、そこで主人公のM属性が効いてくるのです。
本著には、石動美緒と結野嵐子という、2人の正ヒロイン候補が登場します。
ところで、本著の主人公は、生粋のマゾヒストです。マゾヒストにとって、最良の恋人とはどのような人物であるかを考えますと、答えは自然に導き出されます。マゾヒストにとっての最良の恋人は、生粋のサディスト、つまりは「御主人様」であると考えられるのです。
本来ならば、ヒロイン候補という呼び方も正しくはなく、より正確を期すのであれば、「正女王様候補」と呼ぶべきです。そして、美緒と嵐子の2人は、その肩書き通りに主人公を殴り、蹴り、罵倒し、嘲笑し、睨み、蔑むのです。
ヒロインひとつとってもこの有様です。展開がありふれたものであっても、その設定のお陰で凡庸さを感じることはありませんでした。「主人公がマゾヒスト」という設定に振り回されることなく、うまく料理していると思います。
それだけではありません。
男性のMというと、どちらかと言えば情けない印象を受ける属性です。実際、本著の主人公も、凛々しいとか毅然とか、そういう格好良さとは無縁のキャラクターです。
そこを逆手にとって、普段の情けなさをカタルシスへの布石としたのは、素直に見事だと思いました。そこへ至るまでの展開を、淀みなく描写し切った構成力も、素晴らしいものでした。
総評としては、名作に近い良作といったところです。
突出するところはないものの、全体的に完成度は高く、設定のコアさを気にせずに楽しめる、良い作品に仕上がっていると思います。
既に第2巻も発売されていますので、そちらも手に取る予定です。

主人公の砂戸太郎は、究極のM男です。
女性から加えられる、ありとあらゆる暴力によって、苦痛を感じるどころか逆に気持ち良くなっちゃうという、筋金入りのド変態です。
罵倒、罵声、侮蔑、嫌悪の眼差し、殴る蹴るなどの直接的な暴力などなど、普通ならば忌避してしかるべきそれらを、理性を凌駕する本能によって、歓喜と共に受け入れてしまう男。それが、本著の主人公なのです。
中学生の頃に、とある事情からその性癖に気付いてしまって以降、主人公はそれを心の底から忌み嫌いながらも抗うことができず、女性に対して恐怖に近い感情さえ抱きながら、日々を過ごしていました。
主人公にとっては、不注意からみぞおちに肘を入れられたとか、そういう苦痛でさえ快感になります。そして自分を見失い、「もっと殴って下さい女王様!」などと哀願することになってしまうのです。相手の女性はおろか、周りの人達もドン引き間違いなしです。
女性との接触時には、その恥ずかしい性癖を露呈してしまう危険性が常に付きまとうことになるわけで、自分の性癖を嫌悪している彼にとって、そのような状況が心休まるものであろうはずもありません。
そんな主人公ですが、ある日恋をします。相手は、バイト中に見掛ける名も知らぬ他校生です。
年若い彼は、考えます。「もし彼女と付き合うことになったとして、もし喧嘩になったとして。罵詈雑言を浴びせられて、平手で打たれて、その瞬間豹変して、もっともっとと乞うようなことに、もしなってしまったら」と。自らの性癖をひた隠しにしている彼にとって、その想像はとてつもなく恐ろしいものでした。
そして、彼は悩みます。自らの性癖を何とか治したい、しかしどうすればいいのかと。
そこで親友の助言を得、「生徒達の願いを叶えてくれる」と噂の第二ボランティア部を訪ねることにするのです。
そんなお話です。
設定先行の出オチ的な物語かと思いきや、実はしっかりと作り込まれた作品でした。
内容を簡潔に申しますれば、『ハーレム展開のラブコメ』であり、目新しさはそれほどありません。ですが、そこで主人公のM属性が効いてくるのです。
本著には、石動美緒と結野嵐子という、2人の正ヒロイン候補が登場します。
ところで、本著の主人公は、生粋のマゾヒストです。マゾヒストにとって、最良の恋人とはどのような人物であるかを考えますと、答えは自然に導き出されます。マゾヒストにとっての最良の恋人は、生粋のサディスト、つまりは「御主人様」であると考えられるのです。
本来ならば、ヒロイン候補という呼び方も正しくはなく、より正確を期すのであれば、「正女王様候補」と呼ぶべきです。そして、美緒と嵐子の2人は、その肩書き通りに主人公を殴り、蹴り、罵倒し、嘲笑し、睨み、蔑むのです。
ヒロインひとつとってもこの有様です。展開がありふれたものであっても、その設定のお陰で凡庸さを感じることはありませんでした。「主人公がマゾヒスト」という設定に振り回されることなく、うまく料理していると思います。
それだけではありません。
男性のMというと、どちらかと言えば情けない印象を受ける属性です。実際、本著の主人公も、凛々しいとか毅然とか、そういう格好良さとは無縁のキャラクターです。
そこを逆手にとって、普段の情けなさをカタルシスへの布石としたのは、素直に見事だと思いました。そこへ至るまでの展開を、淀みなく描写し切った構成力も、素晴らしいものでした。
総評としては、名作に近い良作といったところです。
突出するところはないものの、全体的に完成度は高く、設定のコアさを気にせずに楽しめる、良い作品に仕上がっていると思います。
既に第2巻も発売されていますので、そちらも手に取る予定です。












