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“文学少女”と恋する挿話集2を読んだ

“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫)


著者は野村美月。
イラストは竹岡美穂。
シリーズ通算で11冊目の本となる。

挿話集1では、本編主人公をはじめとする物語の主要人物について語られたエピソードが多く収録されていたが、この挿話集2では、本編では脇役でしかなかった森ちゃんと、彼女に恋慕する同じクラスの男の子が中心となっている。
加えて森ちゃんの友達である琴吹さんについても紙幅が費やされており、事実上この三人が本著の主役と言っていいだろう。

本編において主要キャラだったのはむしろ琴吹さんの方なので、森ちゃんにスポットが当てられている本著の内容は新鮮に感じられた。
しかし私からすると、目がいってしまうのはやはり琴吹さんの方である。
なぜか。
それは彼女が比類無きツンデレだからだ。

とにかくツンの度合いが凄まじい。
赤面症で、極端なまでの恥ずかしがりで、好きな相手、つまり本編主人公だった心葉くんのことだが、彼の前ではつい無愛想でぶっきらぼうに振る舞ってしまう。
そればかりか緊張のあまりに睨みつけたり、毒舌吐いたりまでしてしまう始末。
そしてそのあと家に帰って枕に突っ伏し、頭抱えて悶絶する羽目になるわけである。素直じゃないにもほどがある。
魅力的なキャラクターの多いこのシリーズにおいても一、二を争うくらいの良キャラ。それが琴吹さんであり、そんな彼女についてのエピソードが、この挿話集2には多く収録されているというわけだ。

だが時系列をさかのぼって、森さんや琴吹さん自身の視点で物語を追っていくと、どうにも切なくなってしまう。
それは物語の終着点が既に見えてしまっているからということが最大の理由だ。
結末が見えていて、どうあってもそれが変わらないと知っている。だから幸福に満ちあふれた心情が吐露されていても、喜ばしいと思う前に切ないと感じてしまう。
けどその切ないと感じる過程すらも、本編ラストのためには必要なのだ。そう理解はしている。
しかし、感情のところで納得しがたいものがあるのもまた事実なのだ…
本当に、本当に、琴吹さんには幸せになってほしいと思う。

という具合に琴吹さんばかりに目がいってしまいがちな私ですが、森ちゃんと反町くんのエピソードも非常によかった。
森ちゃんまじいい人すぎる。
反町くんまじいい男。
琴吹さんは恋愛運こそなかったけど、友達には恵まれたと思う。
なにより印象的だったのが、エピソードの締めくくり方。
文章では描写せず、あえて絵だけで結末を示しているのだ。
ラノベにおいてはイラストがあるのが当たり前になっているが、それを効果的に使っている作品というのは実は驚くほど少ない。
記憶にあるかぎりでは、奈須きのこのDDD2巻の見開きイラストが思い浮かぶくらいだ。
なので一番大事なシーンをイラストレーターに託すという本著のスタイルには、少なからず衝撃を受けた。
しかもこれがまた非常にうまい使い方なのだ。ああ、こうするのが最高なんだろうと素直に頷けるくらいにいい感じなのだ。
物語として面白くあり、想定外の驚きもあり。
楽しませてもらった。

あとは、心葉くんに役乗りすぎだと思った。
仮にも本編主人公だったのに、あの扱いはあんまりだ。
ただ、琴吹さんのことを考えれば、あの程度は物の数ではないのかもとも思ってしまう…

12月には外伝の2巻が発売される。
その際に、DVD付きの特装版も同時に出るようだ。
Production I.Gによる劇場アニメ版の製作が現在進められており、特装版のDVDにはその先行映像が収録されるようである。
価格も1,500円とこの手の商品にしてはリーズナブルなので、外伝2巻はこちらを買ってみようと思っている。
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テーマ : ライトノベル書評
ジャンル : 本・雑誌

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