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君が僕を2を読んだ

君が僕を 2 (ガガガ文庫)


著者は中里十。
イラストは山田あこ。
サブタイトルは「私のどこが好き?」。

この作品には、読者を魅了する素晴らしい点が数多くある。
なかでも際立つふたつを以下に記す。

まず一つ目、「人物像の複雑さ」。
ライトノベルにおいては、キャラクターは記号的に書き表されることが多い。
ツンデレだったり、クールだったり、病み気味だったり、素直だったり。
性格だけにとどまらず、髪型、髪色、容姿、服装などにいたるまで、ある程度決まった「型」のようなものが存在している。
もっと言えば、これらはラノベに限った話ではなく、アニメやマンガ、ゲームなどにおいても同様と言えるだろう。
そういった「型」、パーツとも言い換えられるそれらを組み合わせてキャラクターを作り上げることには、一つの大きな利点がある。
それは、「わかりやすい」ということ。
少し読んだだけでも、ぱっと見ただけでも、それがどういうキャラクターなのかがすぐに把握できる。それがキャラへの感情移入をうながし、物語への没入を早めてくれるのだ。エンターテイメントを楽しむうえで、これは大きな利点と言える。

しかし、わかりやすいということは、必ずしも利点だけをもたらすわけではない。
わかりやすいということは、その分だけ先読みしやすく、飽きられやすいということでもある。
だからこそ、キャラクターに設定を付け足したり、キャラ自体を新しく追加するといったことが重要性を帯びてくるのだが、話の本筋に関係がないので割愛する。

対して、わかりにくいキャラクター。
すなわち記号的でなく、型にはまらず、複雑なキャラクターには、感情移入しがたいという致命的な欠点がある。
人間は、知らないものを理解しようとする生き物だ。理解の及ばぬものについても、自分なりの解釈を見出そうと努める。そういう風にできている。
その過程はシンプルさとは無縁であり、即時的な楽しさを得るにはおよそ向かない。
あるとするなら、キャラクターの動くさまを俯瞰から眺め、行動の真意を推察する。そういった楽しみ方だ。

ここで文の最初に戻ってくる。
本著の魅力の一つ、「人物像の複雑さ」。
本作のキャラクターは、ほとんど全員が複雑な心理と行動様式を内包している。
行動の先が読めないばかりか、真意さえもおぼろげだ。
それはときに、読者に対して不快感を与えてしまうだろう。知らないこと、理解できないことは不快であり、場合によっては恐怖の対象ともなりうるからだ。
しかし同時に、それらは楽しみの種でもある。
キャラクターの行動の真意が量れず、何度となく読み返して納得のいく推論を見つけ出す。
この試行錯誤が、たまらなく楽しい。
翻って、複雑な像を持つキャラクターたちの、行動や心情を理解しようと努めることは、数え上げるに値する魅力ともなる。

これがまず一点。

続いて二点目。「構成の巧みさ」。
本シリーズのストーリーは、37歳の女性が15歳当時を思い返すという形で綴られていく。
大半は15歳当時の主人公視点だが、前触れなく現在、つまり37歳の主人公視点に戻ってきたりもする。
時点の移動が頻繁に行われているのであり、そしてこれは、小説を書くうえで避けるべきと言われていることの一つだ。
理由は単純、わかりづらくなるからである。
その禁を犯しているはずの本著はしかし、読みづらいとはまるで感じない。むしろ、時点移動がストーリーへ奥深さを与える要因にもなっている。
それには、37歳の主人公がストーリーテラーとして作り出した、15歳当時の友人の幻影が大きく寄与している。
彼女が主人公とは違った視点から過去の出来事を紐解くことによって、一歩間違えば難解になっていただろうストーリーが、読みやすくわかりやすいものへと変化しているのだ。
彼女の存在なくして、複雑でありながらわかりやすいというこの構成の妙は、なしえなかっただろう。

以上二点を筆頭に、魅力に溢れる本作。
百合作品としては傑出した一冊であると、個人的には思う。
書き足りないことがまだあるので、それについてはまた後日。
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テーマ : ライトノベル書評
ジャンル : 本・雑誌

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