「君が僕を」を読んだ

著者は中里十。
イラストは山田あこ。
サブタイトルは「どうして空は青いの?」
「恵まれさん」というシステムがある。
商売繁盛祈願の一環として、巫女でも坊主でもなんでもないただの人に、神様の代わりをやってもらうというシステムだ。
担ぎ上げられた、あるいは立候補した人は、金銭に触れることを禁じられ、衣食住のすべてを寄付によってまかなうこととなる。
言葉通りの「恵まれさん」だ。
恵まれさんに恵んであげると、あの世で閻魔さまに裁定を受ける際に、罪の重さが紙切れ一枚分だけ軽くなるという話もあって、これのおかげで商売人以外にも認知されたシステムとなっている。
大抵はおばあさんが勤めるという恵まれさんを、この物語において勤めているのは中学生の女の子。
そして主人公も、中学生の女の子。
そんなふたりの出会いを書いた物語だ。
感想をすごく書きにくい。
なぜ書きにくいのかも書きにくい。できれば察してほしい。
良いか悪いかで言うなら、間違いなく良い。
「どろぼうの名人」、「いたいけな主人」を書いた中里十の文章を、期待にはずれることなく堪能させてもらった。
氏の文章の独特さは、もはや世界観の一部になっている。徹底して具体性を追求する一方で、描写を恐らくは意図的に削ってあり、肝心なところが見えにくかったり、見えないままだったりする。
そうしたところは、もう想像することでしか補えない。
読後感は決して良くはないけど、それさえも余韻として楽しめる。
面白い!って感じの話ではないので、娯楽小説としてはいまいちだと思う。
のみならず、百合としてもあまり優れた作品とは言えないかもしれない。
でも好きかそれとも嫌いかと問われたなら、大好きだと即答できる。
そんな作品だった。
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